VOL13  黒革の手帳

古き良き昭和の時代。
まだインターネットが今のように成熟していなかった1981年に、先回のコラムでご紹介した滋賀銀行9億円横領事件と並び多くの人を驚愕させた事件が起きました。

三和銀行オンライン詐欺横領事件。

当時、三和銀行に勤務していた女子行員が朝9時の始業と共にオンラインを操作し、銀行の資金1億8千万円を4つの支店の架空名義の口座に入金し、その後、お金を引き落として海外に逃亡したのです。

たった1日で1億8千万円もの金額を送金したのです。

この時代、コンピューターのチェックシステムが現在ほど発達しておらず、この犯行がなされた日は、3月という年度末で給与振込みの日のため入金チェックが一年の中でも最も甘かった日、その盲点を狙っての犯行だったと言われています。

この事件の主人公は20歳の時からこの銀行に務める真面目な女子行員だったそうです。
入行して早々に出会った男性と不倫関係になり、その関係に何度も悩み、それでも離れられず12年間苦しんだそうです。

そんな折、長身でイケメンな男性と出会います。

この男性も妻子ある身。
さらにこの男性は商売が傾いたからと彼女から最初10万円借金し、そこから借金する金額はどんどんエスカレートしていきます。

彼女は「ノー」が言えないのです。

好きな男性に貢ぎ、その男性との愛をつなぎとめるためにお金を作り、そしてこの犯行を彼女は選択してしまいます。

一緒にフィリピンで日本料理屋でもやろうと約束し、この計画を実行しました。
前述の1億8千万円のうち5千万円を彼女が引き落として海外に逃げようとした時、この男性は彼女に500万円だけ渡し、「1ヶ月後にフィリピンに行くから」と約束し、そして結局彼女の元には現れませんでした。

全くをもってゲスな男です。

彼女の生年月日は公表されていますので見てみましょう。

坤造 1948年11月18日生まれ 生時不明

    傷官      七殺
年 戊(陽土) 子 癸(陽水)
    七殺      正官    正印
月 癸(陰水) 亥 壬(陽水) 甲(陽木)
            食神    比肩    偏印
日 丁(陰火) 未 己(陰土) 丁(陰火) 乙(陰木)

時 不明

彼女の命式から何が見えましたか?

今回は「ゲスな男を愛してしまう女性」が主人公ですので、相手の男性を意味する正官(しょうかん)や七殺(ななさつ・或いは偏官)のエネルギーに注目する方も多いことでしょう。

彼女は正官と七殺(偏官)の両方を持ち、それが複数あり、しかも重たい状態ですので「相手の男に振り回される」とか「相手の男性の言いなりになってしまう」という要因を元々持っている方です。

「黒革の手帳」の主人公・原口元子のように男性を逆に利用するだけのしっかりとした自分のエネルギーを彼女は持っていないのです。

そして、この命式から何が見えたでしょうか?

彼女は亥(いのしし)月という初冬に生まれた丁(ひのと)火の人です。
丁は人工的な火で美しい光を持っています。
火のありがたみが深く感じられる時期ですが、年支の子、月柱の癸亥と水が強く、丁火はとても不安ではかなげです。
丁火を燃やし続ける木と暖かみのある火が必要です。


その大事な木は亥の中にある甲と未の中にある乙という余気(サブエネルギー)として存在しているものの、本気(メインエネルギー)にはありません。

歩んでいく運でも、

5歳     壬(陽水)戌(陽土)
15歳   辛(陰金)酉(陰金)
25歳   庚(陽金)申(陽金)


と木エネルギーとは関わりのない人生を歩んでいきます。

丁火を自分自信とする彼女にとっての木エネルギーは通変星とか十神(じゅっしん)では印星を意味します。

印星は実は私たちにとってとても大切なエネルギーです。

印星は自分自身をサポートしてくれるエネルギーですから、このエネルギーがあれば、人からのサポートと愛情を受け、愛情豊かに育っていきます。
この働きが良ければ知性が増しよく学びます。
人から大切にされるので、自分も人を大切にします。
深い愛情を持って人と接する、
そういう心が自然と宿ってきます。

学生時代に良い先輩に巡り合えたり、芸能人が良い作詞家あるいは作曲家の先生に出会えたり、アスリートが恩師に出会えるのもこのエネルギーのおかげだと思います。

能力が高く、人に頼らず、自分の力で自分の人生を切り開いていく人であっても、所詮自分の力には限度があります。

「♪人は皆一人では生きていけないものだから(ふれあい)」
という歌の文句ではありませんが、一生懸命生きている自分の姿を応援してくれる誰かがいるのは心強いことです。

逆に彼女のように元々印星が弱く、歩んでいく運でも印星エネルギーに出会わないと、本気で彼女のことを心配してくれる仲間や目上の先輩になかなか出会えないのかもしれません。

もし、印星エネルギーのある人生を歩んでいたら、たとえ同じように不倫をしても、誰かが本気になって反対してくれたでしょう。
真剣に彼女と向き合い、彼女が本当の愛を見つけるまでとことん彼女と話し合ったでしょう。

自分を支えてくれる人がいる、というのは本当にありがたいことです。

一部には「彼女は身弱(みじゃく)だから自分をサポートする印星が良い働きをするだろうが、身旺(みおう)の人はその限りではない。」とおっしゃる方がいると思います。
「そんな四柱推命の常識を孟意堂は知らないのか」と。

でも、本当にそうなのでしょうか?

身旺の人は本当に印星が不要なのでしょうか?

私たちが人として人間社会で生きていく限り、ジャングルの中ではなく人と触れ合って生きていく限り、身旺(みおう)であろうと身弱(みじゃく)であろうと基本的に印星エネルギーは必要だと孟意堂は考えます。

もちろん、それぞれの人生の細かい分析が必要ですが、いくら力のある人でも人である限り誰かのサポートは必要なのです。

そして、印星エネルギーは女性にとって特に大切なエネルギーです。

多くの女性の相手となる男性のエネルギーは正官(しょうかん)、七殺(ななさつ)です。
この何れもが自分自身を剋する役割を持っています。
女性は男性に攻められ、時には傷つき、時には振り回されやすいのです。

しかし、印星エネルギーがあれば話は違います。
印星エネルギーは、官星エネルギーと自分の間に入り、そのおかげでスムーズな流れに変わります。
官星エネルギーと印星エネルギーが共にある女性は、なんだかんだと言って相手の男性が自分のサポートをしてくれ、本気で大切にしてくれるのです。

だから、女性としての幸せを考える時には印星エネルギーがどうあるのかを見ることが一つの大切なポイントです。

前述の彼女のように元々自分自身のエネルギーの印星が弱く、歩んでいく運でもない場合はどうしたら良いのでしょうか?

無ければ作りだせば良いのです。
そのために風水があります。